<ビートルズ楽曲にみる不定調性進行の基礎>  

このページでは、"コード進行が変わっている"代名詞のように言われるビートルズ楽曲のコード進行を題材に、既存のコード進行学をちょっと変わった角度から考える「不定調性論」のご案内をさせて頂いています。

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M-Bankの寺内と申します。

M-Bankで制作・講師・スタッフ・運営を行っております。

不定調性論は「ポピュラー音楽の和声素材の取り扱いについての体系を作曲法、編曲、DTM、音楽分析、観賞法にまで拡張していく方法論の総称」です。


実例についての諸問題については下記ブログなどをご覧ください。

不定調性進行に関するブログは⇒こちらから

より理論的解説に特化した専用の教材もございます。

「不定調性音楽論」参考教材のご購入は⇒こちらから

2017年より、実験的作品制作等の雑記を含んだブログも開始しました。こちらから

不定調性論全編解説をYouTubeで開始いたしました。

 

2017年度中には30本の動画にまとまるはずです。教材から主となる概念をすべてピックアップし、本人口頭解説を加えました。

ポピュラー音楽と伝統音楽理論の違和感を超えていくには膨大な壁があり、それらを打ち破るには、「機能和声論」が属する元の数理の風景までさかのぼり、そこから機能和声論を包含する方法論を作ることで、下記のような特殊進行を簡易に作成する感覚が身につくと思います。

 

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ビートルズのコード進行で特徴的な手法の一つに、メジャーコードの連鎖を用いたものがあります。
(ビートルズのコード研究発表では、より細かく類別しています。→こちら


何曲かご紹介します。

※「|」で区切ったのは小節線です
△はメジャートライアドの意

■HEY JUDE
ラストの繰り返し部分のコードです。
F△ |E♭△|B♭△|F△|
=degree=(key=F)
I△ |VII♭△ |IV△ |I△ |

主和音をF△とすれば、E♭△は同主短調Fマイナーキーのダイアトニックコードからの借用、という解説に一般的にはなるでしょう。
この理解はとても大切です。
ひょっとすると「ああ、メジャーキーとマイナーキーが入れ替わって、こんな雰囲気になるのだなあ。」
と、考えてこの進行を理解するかもしれません。

しかし、本当にそういう理解であなた自身の中にある音楽性は、納得できているのでしょうか。ここは本当によく考えて、感じてみてください。「その理解であなたは得心できますか?」
FメジャーキーとFマイナーキーが入れ替わっている、という理解でこの進行が作り出している音楽的言語、雰囲気に納得し、それをあなた自身の音楽に活用できるでしょうか。

これらをトニック→サブドミナントマイナー代理→サブドミナント→トニックと分析して分かるのは、見かけの構造です。大工さんだったら見かけの構造を見れば大体建物の構造が予測できるでしょう。ラーメン屋さんだったら、ラーメンを見ればどんな内容かイメージがわくでしょう。

音楽理論が教えていることも同様で、コード分析だけで音楽の言わんとしていること、自分がその技法どう使えばいいか分かるのはかなりの熟練者ということになります。

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ビートルズのメンバーだって、今となっては歴史に名前を残していますが、作曲を始めた当初は何も分からなかったはずです。たくさんの曲をコピーして、知っているコードを並べ、浮かんでくるメロディを載せては、見よう見まねで作ったはずです。

初期のビートルズ以前のコードの扱いについてはこちらをご参考ください。
その手法が現代ではポピュラーミュージック作曲のひとつの方法となっています。

これらの一般化した手法をもう少し伝統技法と照らし合わせて考えることはできないものでしょうか。そしてそれらを体系化して、ポピュラーミュージック独自の作曲法を教育機関で教えるということはできないものでしょうか。不定調性論は、そうした願望から、伝統技法の歴史を損なうことなく、平行して学習できるようなフォーマットを作りました。これによりヨーロッパの民族音楽やブルース、ジャズ、現代音楽まで、同じ発想でアプローチしていくことも可能です。

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では改めて、

F△ |E♭△|B♭△|F△|

この進行を弾いてみて、または音源を聴いてみて、皆さんはどんなふうに感じますか?「ただのヘイ・ジュードじゃん」というところから、「ビートルズっぽい進行」とか「わくわくしてくる」とか、そういった何気ない感覚を覚え、そこから、その「進行感」が体に入ってくると、自分の感情や、思い出、心情、印象などと結びつき、何とも言えない音楽的印象を把握できる方はいませんか?。そういう感覚を明確に持てる人はそれが「この進行いいな」とか「これクールだ」という総合的印象になって、「この進行使って曲作りたいな」となるはずです。

これを「共感覚的」とおっしゃる方もおられるかもしれませんし、そういう理解でも構いません(これらの感覚的理解についてはとても個人差があります)。

この音楽がもたらす印象を不定調性論では「音楽のクオリア」と教材内では述べています。音楽があなたの心象を起動させてくれるのです。時に雰囲気、時に感情、時に色味、時に匂いや思い出、そして、その心象をクローズアップさせて音楽を作る、というところから音楽をはじめ、必要に応じ、音楽理論を平行して学べばよいと私は考えます。先に音楽理論を学んでも、納得はするでしょうが、はたしてオリジナル曲が生まれるかどうかは分かりません。音楽的学習と作曲は全く異なる行動ですから、一人一人に対してのこの学習の見極めを音楽教室の講師が行えばよいのです。

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こうした音楽的印象が整って来てから、音楽理論を学ぶと「ああ、わたしってSDmで興奮するんだ」とか「あ、おれVI♭M7が好きかも」という風になってきて、音楽理論を自分の言葉で置き換えるようになります。

インターネットの音楽理論解説も結局はその著者の印象や考え方が分かりやすいか、共感できるか、というところですが、最後の最後までは共感できないはずです。つまり、興味がわいたら後は自分自身で音楽の持論を組み立てていかなければならないからです。

不定調性論も、そうした角度から少しずつ認知頂き、用語もちらほらと使って頂けるようになりました。それでも結局は私個人の方法論なのです。皆さんそれぞれの持論をしっかり構築できるようにサポートするために不定調性論を用いています。平たく言えば、「自分が思う通りに音楽をやるのも、ときには楽しいよ。そうした方法も一つあなたも持ってみてはいかが?」ということですね。

「不定調性」という言葉自体は、汎用性の高い用語ですから、皆さん自在に使って頂いて構いません(商標登録等の手続きは必ず事前に当校までご相談頂きたいです)。

ビートルズの進行だって、ビートルズが最初にやったわけではありません。でも彼らは自分たちのやり方であそこまでの商業的成功を呼び込んだのです。その結果としてのビートルズ進行は、音楽教育的にも実に示唆に富んだ独自論が展開されている、と思いませんか?ポールのやり方でもジョンのやり方でもなく、ビートルズ技法は、ビートルズという企業が作り上げた方法論とも呼べるものでしょう。

伝統理論の学習は必須です。でもそれは学習の2-3割程度にとどめ、作曲や演奏ができる人は、音楽活動の7-8割を作曲と演奏に費やして頂きたいです。その作品が未熟でも良いと思います。その次の作品はもっと良くなります。作品を作り続けなければ良くなることはありません。そして時間がかかります。早く現場での活動に移行してください。

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もう少し理論寄りの話をしましょう。

次の質問をされた時、皆さんはどのよう答えますか?

Q1.なぜメジャーキーとマイナーキーが混合されるとこんな雰囲気(どんな雰囲気?)になるのですか?
Q2.このようなコード連鎖はなぜ行うことができるのですか?
Q3.この方法論にはどういう理屈があるのですか?
Q4.自分が作曲で使うならどういう風に使っていけばいいですか?
Q5.このコード連鎖方法は、他にどのような体系に発展可能なのですか?

これにすんなりと答えられる方は、不定調性論は特に必要ないでしょう。相当理知的な自己論が確立されているからです。

先の音楽のクオリア、ということを念頭に置いた不定調性論でこの問いへの答えを考えますと、

Q1.⇒個々人が感じる音楽的印象を「音楽のクオリア」という感覚として確認し、和声が進行した時のあなたの感覚感がどのようなものか確認/開発しながら、あなただけの独自の和声法を作り上げてきます。
Q2.⇒あなたの音楽のクオリア=音楽的印象が「これをよし」とするからです。
Q3.⇒「あらゆる和音はあらゆる和音に進行可能であり、あらゆる和音の連鎖は必ず何らかの雰囲気を持つ」という理屈です。
Q4.⇒まずあらゆるメジャーコードの連鎖に対してあなたが音楽的に使用できるかどうか考えます。それから三度堆積でない
和音構成法を学び、あなたの音楽的印象を重視した和声進行の方法を基礎構造から開発していきます。
Q5.⇒それが不定調性論なのですが、ビートルズ、ユーミン、スティービー・ワンダーなどの楽曲考察を通して勉強されることで自由な和声使用の方法論や自分が好きなパターンが見えてきます。

これは独自論ですから、皆様にこれを押し付けるわけではありません。作曲する人が一度は持つ「音楽理論に対する疑問」に対する見解を述べ、あなた自身が感じてきた違和感を浮き彫りにします。そこから楽曲制作の為のステップを用意しています。1-2年程度の期間で、オリジナルスタイルの開発を一緒に行います。迷いがなくなればあとは実験/制作/リリース/研究あるのみです。音楽のクオリアは音楽的経験で変化します。コードの響きは音楽的経験で変化するのです。だから今ひたすら覚えるだけでは非効率的です。覚えても変化するからです。だから作る、演奏する、という作品形式の形で発信することで、一つ一つ結実していきます。

2014年にユーミン楽曲に見る不定調性進行のコード進行解説レポート⇒こちらをご参考下さい。

またスティービー・ワンダー全曲から特殊なコード進行を抜粋し、ユーミンレポートでまとめた方法論を活用して考察するレポートも作成しました。⇒こちらをご参考下さい。

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ビートルズ作品のメジャーコードの他の連鎖例を簡単に列挙します。

■SOMETHING
イントロ 
F△ |E♭△ |G△ |C△ |〜
=degree=
IV△ |III♭△ |V△ |I△ |〜

■DAY TRIPPER
サビ
F#7 | | | |A△ |G#7 |C#△ |B△ ||E△〜
=degree=
II7 | | | |IV△ |III7 |VI△ |V△ ||I△〜

■LADY MADONNA
Aメロ最後
A△ D7 A△|F△ G△ |A△ |〜
=degree=
I△ IV7 I△|VI♭△ VII♭△ |I△ |〜

■A HARD DAYS NIGHT 
冒頭
G△ C△|G△ |F△ |G△ |〜
=degree=
I△ IV△|I△ |VII♭△ |I△ |〜

■THE NIGHT BEFORE
Aメロ
D△ |C△ |G△ |A7 |〜
=degree=
I△ |VII♭△ |IV△ |V7 |〜

■BACK IN THE USSR
Aメロ
A△ |D△ |C△ |D△ |×2
A△ |C△ |D△ |〜
=degree=
I△ |IV△ |III♭△ |IV△ |×2
I△ |III♭△ |IV△ |〜
同じコードを用いて異なる雰囲気(進行感覚)を出しています。

■I SAW HER STANDING THERE
サビ
E△ |E△/G# |A7 |C△ |E7 |B7 |E7 |〜
=degree=
I△ |I△/G# |IV7 |VI♭△ |I7 |V7 |I7 |〜
※ブルース系の7thコードが使用されていますが、全てメジャーコードで弾いても成り立ちます。

■A DAY IN THE LIFE
後半のAH〜というコーラス部分
C△ |G△ |D△ |A△ |〜
=degree=
IV△ |I△ |V△ |II△ |〜

■YOU WON'T SEE ME
A△ |B7 |D△ |A△ |〜
=degree=
I△ |II7 |IV△ |I△ |〜

■SHE LOVES YOU
Em |Em |A7 |A7 |C△ |C△ |G△ |G△ |
=degree=
Im |Im |IV7 |IV7 |VI♭△ |VI♭△ |III♭△ |III♭△ |



その他"GET BACK"、"I AM THE WALRUS"、"EIGHT DAYS A WEEK"、"SGT.PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND"、"PLEASE PLEASE ME"、"IF I NEEDED SOMEONE"、"I'LL FOLLOW THE SUN"などにも自由なメジャーコードワークが使用されています。
ギターで何となく知っているコードを押さえて左右にずらしていくと、面白い響きの連鎖に出会うでしょう。
ビートルズ、ユーミン、スティービー・ワンダーのコード進行に対して、あなた自身「面白い!」と感じられるのだとしたら、もっと面白いものが作れるかもしれません。そう素直に感じることのできる「音楽的クオリア」を積極的に磨いてください。


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皆様にある自由な感性は、通例の学習の中で既存の模範的な曲に触れ、一度は機能和声論に凝り固まってしまうこともあるでしょう。

同時に、私はこれらの既存感覚をいつでもリセットできる学習課程を研究しています。

皆様の少しでも刺激になれば、音楽教室のスタッフ/講師としてこれほどうれしいことはありません。

詳しくは教材、ブログなどをご覧ください。

HPでは教材の第一章(旧版)の一部を公開しております。 こちらのページにございます。

 

■不定調性進行をもっと詳しく

不定調性=調が定まらない、というのはどういう状態か、というと、
たとえば、
DmM7 |GmM7 |CM7 |
というものや、
CM7 |E♭7 |D♭M7 E7 |GM7 C7 |FM7  |
のような、一つの音階や調性で解説が難しい進行を「不定調性進行」とします。無調ではないが、調性が様々に変化するように解釈できる音楽の考え方を新たにします。
例えば、

CM7 |FM7 |GM7 |CM7 |

上記の進行は
「え?GM7はG7じゃないとダメなんじゃないの!?」と思われるかもしれません。これはユーミンが80年代に用いた手法の発展形です。

このような発想を「特殊だ」として既存の方法論から排除してしまうと、そこから広がるかもしれない和声の自由活用(あなたの思うままの)を遠ざける可能性もないでしょうか。
不定調性論は伝統的な和声構成法に、現代の響きを加味した形で再構成しました。

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