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9,オクターブの概念

それではこのデフォルメ手法を最大限に利用し、音の自然的配列の最たる素材「自然倍音列」から導き出せるいくつかの考え方を挙げていきます。

 

基音 二倍音 三倍音 四倍音 五倍音 六倍音 七倍音 八倍音

c      c    g   c     e    g   b♭   c

 

いま一度この倍音列を見てください。

このように整数倍に振動数が規則的に(数学的な説明で補足してみると、1,2,4,8,16,32という公比2の等比数列上の倍音に現れる規則)変化する中、音名もそれに沿って変化していきます。

まずオクターブ音が現れる順に区切ってみましょう。

 

 

            c           基音

            c―c          基音〜第二倍音

           c−g−c          第二倍音〜第四倍音

         c−e−g−b♭−c       第四倍音〜第八倍音

      c−d−e−f#−g−a♭−b♭−b−c    第八倍音〜第十六倍音

 

このように倍音次数が上がれば、それだけ含まれる音の数が増えます。振動数値が拡大するにつれて、基準となる基音の振動数の数値が持つ相対的の変化の割合が小さくなっていくからです。

  基音の振動数+基音の振動数=第二倍音の振動数=c

第二倍音の振動数+基音の振動数=第三倍音の振動数≒g

第三倍音の振動数+基音の振動数=第四倍音の振動数=c

第四倍音の振動数+基音の振動数=第五倍音の振動数≒e

第五倍音の振動数+基音の振動数=第六倍音の振動数≒g

・・・・

倍音の次数が高くなり振動数値も大きくなるにも関わらず、足される数(基音の振動数)は一定なので、その相対的な音程が狭くなります。

 

基音c−オクターブ−第二倍音c

第二倍音c −完全五度−第三倍音g 

第三倍音g −完全四度−第四倍音c

第四倍音c − 長三度 −第五倍音e

第五倍音e − 短三度 −第六倍音g

第六倍音g − 短三度 −第七倍音a#

第七倍音a#− 長二度 −第八倍音c

 

倍音次数が上がれば上がるほど次のオクターブ音にたどり着くまでにいくつものステップを経過しなければならないということです。基音cを65.4064として計算してみます。

 

第二倍音c −基音c (=130.8128−65.4064)=65.4064

第四倍音c −第二倍音c =オクターブ差130.8128

  第八倍音c −第四倍音c =オクターブ差261.6256

  第十六倍音c−第八倍音c =オクターブ差523.2512

第三十二倍音c−第十六倍音c=オクターブ差1,046.5024

第六十四倍音c−第三十二倍音c=オクターブ差2,093.0048・・

と続きます。

 

基音の振動数65.4064を足していては高い方のオクターブ間に行けば行くほど次のオクターブ音にたどり着くまでに何度も基音の振動数を足さなければならなくなります。65.4064という「一歩」が、倍音次数が上がるに従い相対的にどんどん狭い一歩になるからです。そのぶん目的地までは歩数が掛かるというわけです。

この「1オクターブ離れた音」を同じ音名で呼ぶことについて、比較音楽学の権威クルト・ザックス博士の著書『音楽の起源』(皆川達夫/柿木吾郎 共訳 音楽之友社)P55で、

 

「平行8度は男性と女性が一緒に歌う場合に避けられない現象であり、したがってもっとも低い文化水準にある人びとによってさえも用いられている」

 

と紹介されているように、ごくごく自然な成り行きで低音と高音による同音の感覚が人類に発生したと理解できます。このような男女差による霊的な違いともいうべき差が、私たちの感覚器官にオクターブという概念を組み込んだ、と言うこともできるでしょう。

ゆえに「高さの違う同じ音=オクターブ」という考え方と感覚を受け入れることに抵抗は無いと思います。

また、十六倍音以上に細かく分割してしまうと、十二音平均律の分割程度を超えてしまい、平均律割り当て上は同音名が連続し、慣習的現象とも疎遠なものになり、資料的に煩雑さが増すだけですので、本書では第十六倍音までの音の数理を細分化された限界としていこうと思います。

大切なのはこれらの音に数理的な序列があるということです。書き方を変えてみますと、

基音を1cとしたら、

第二倍音は2c、

第三倍音は3c・・・

となります。このほうが倍音の性質と数理を良く表しています。

例えば第十倍音はe(近似的な解釈としての音名割り当てとしての)ではなく10c(=5c×2)という表記をすることもできるでしょう。そうなると第十倍音という存在はeという音ではなく基音cの10倍の振動数を持った音、と捉えることもできます。これらを先ほどの音のピラミッドに当てはめてみます。

 

1c

1c−2c

2c−3c−4c

4c−5c−6c−7c−8c

8c−9c−10c−11c−12c−13c−14c−15c−16c

 

基音1cを基準としたフォルムができます。自然倍音列、という考え方の中では、基音の振動数比を1とすることで、他の音を基音から何倍音にあるか、を規定できるわけです。これを「overtone class=倍音列クラス」とします。不定調性音楽論では、この自然的に規定できる倍音クラスを元に、和声を作り、音楽的進行を作っていきます。従来の機能和声理論やジャズ理論、ブルースなどの方法論に拠らない、より数理的な生成法といえます。

また近似値を全て12音に振り分ける、という発想は「平均律クラス」という考え方になるのかもしれません。

 

ここでそれぞれのオクターブの分割範囲に名前を付けて区分けしていきます。

  

基音〜第二倍音   この範囲をオクターブレンジ1とします。

第二倍音〜第四倍音 この範囲をオクターブレンジ2とします。

第四倍音〜第八倍音 この範囲をオクターブレンジ3とします。

第九倍音〜第十六倍音 この範囲をオクターブレンジ4とします。

第十七倍音以上は特に扱いませんが、同様にオクターブレンジ5、オクターブレンジ6などと呼ぶものとします)

 

また「オクターブレンジ」は表記上「Octレンジ1」、「Octレンジ2」などと表記することもあります。

どのOctレンジでもそれぞれ隣り合った音の振動数差はあくまで基音の振動数です。つまり高い音になればなるほどそのOctレンジ全体の振動数の差が広くなっていく(基音の振動数の整数倍になる)といえます。

このオクターブの分割が一つ一つの音楽の音を生み出す数理でもあると考える(全ての音は一つの基準の振動数の複数段階でのオクターブ間での分割でできる音程を用いることで作ることができる)と、音階や音楽という存在に対してまた違った考え方ができるでしょう。

(後略)

 

 


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